生まれつき目が不自由な娘、月子。
ふとした事から、彼女と出逢った詐欺師・榊は、月子を騙そうと、医者を装い近づく。
しかし、彼女の中に自分と同じ苦しみを見つけた榊は、その目を治してやりたいと願うようになる。

ある日――榊は、月子に奇妙な骨董屋の話しを始める。
それは仁王坂の途中にあるという、九十九堂という骨董屋の話だった。

店の主は言う。

「古い物には、不思議な力があるのです。それこそどんな願いも叶えてくれるような――」

そして始まる、不可思議な物語。

鬼ならざる鬼の姿を象った異形の「橋姫」。
不死の霊薬を掬うために作られた「柄杓」。
そして古い経典で折られた「風車」。

九十九の神が宿る骨董の力によって、店を訪れた榊の――そして女たちの運命が少しずつ狂いだす。
心の底を暴かれた、彼らが辿る結末とは―?

連作オムニバスで描く物語は、切ない結末へと集結する。

――愛する人の為、人はどこまで残酷になれるのだろう。

過去に上演した「語り部シリーズ」最新作となる今回は、
「風」を副題として上演いたします。